INTERVIEW #2
大ヒット発売中の完全新作ゲーム
「超探偵事件簿 レインコード」チームを座談会
形式で総力インタビュー!
KADOKAWAグループでゲーム制作に関わる
皆様のお仕事とその魅力を、詳しくご紹介します。



「超探偵事件簿 レインコード」チームの皆様が、日々の業務で大切にされていることはありますか。
「プレイされている方がどう思うか。」これはチーム全員が大切にしているのかなと思っています。
そうですね、「ユーザー目線」って大事ですね。ゲーム開発をやってると、開発スタッフは同じところを延々と作業することになるので、初見の印象が分からなくなるんですよね。繰り返しプレイしている私たちは委細を把握できているのですが、初見でプレイしたユーザーはどう思うだろう...この表現は伝わらないのでは?みたいなことはいつも意識しています。
「常に分かりやすく」を大事にしています。そもそも小高さんのシナリオは非常に分かりやすいんですよね。専門用語もあまりないし、ミステリーなのでもちろん謎は所々にあるけど、その謎もちゃんと理解しやすいし、オチも分かりやすい。だからそれを画に起こす際も視覚的に一目でわかるような形にしなければいけないと考えています。
操作とかも、簡単になるべく分かりやすくを心掛けているつもりです。
ゲーム操作などの難しさが売りになるゲームもあると思うのですが、それとは真逆のアプローチです。アドベンチャーゲームで、操作難しくて進めなくなってしまうのは致命的にダメだと思うんですよね。なので誰でもクリアできるように作っていきたいです。
でも実際にゲームをプレイされた方がそう思ってくれるかどうかは結構社内でも分からなかったりするので、開発に関わってない社員にちょっとプレイしてもらうこともしていますが、ゲーム開発に関わっていないお客様が実際にどう思われるのかは発売までは分からなくて不安になったりすることがありますね。
まああとは開発期間が長いです。この長い期間、地道に作業する中で「モチベーションの維持」は非常に重要だと思っています。
今作は(スパイク・チュンソフト)社内で作業が始まった時にちょうどCOVID-19が始まってテレワークにしなきゃ!みたいな頃でした。だから4年くらい...
そのずっと前からシナリオ執筆などは先に進んでいて、実際の開発作業としてはそれが終わってからシナリオに沿って組み立てていくという感じです。
実際、背景チームでも10人くらいいますし、外部のスタッフも多く動いています。楽しく作業できることも大事ですし、自分たちがいま何を作っているのかをちゃんと共通理解していかないと、個々の作業が集結した時に全く違うモノや思いもよらないモノになっていたりします。なので意思疎通も必要ですし、自分の担当している部分がゲームのどういう部分なのかというのを理解することも必要です。それがモチベーションアップにも繋がるのでそこは大事にしています。
自分は「勤務時間」を大事にしています。あまり遅くに来ないのは当たり前ですし、あと「返事をきちんとする」というのも大事にしています。Slackでコミュニケーションを取っているのですがワーッと来るので、漏らさないように気を付けるようにしています。あとは自分たちはリードなので、チームの部下たちがモチベーションを持って長い開発期間をこなせるように考えたり、様子をよく見たりするように気を遣っています。が、同時にメンバーの成長のためにはその人が苦手だと思うこともあえて担当させてチャレンジさせたりします。
自分もプログラム担当として常に新しい技術がずっと出てきていますので「常にトレンドの技術を追う」「チャレンジする」のは大事にしています。技術の進歩に伴い、プログラマーももはや少人数では賄えないので、大人数でいつも試行錯誤を重ねていますが、結果として開発の幅も広がり、できることも増えてきたのでプラスになっていると思います。
開発内でのチャレンジ項目みたいなのは、「ダンガンロンパ」シリーズ等でも毎回あります。各位にチャレンジしてもらったりして、今までやったことがない仕様や技術を各パートで入れて頂いています。
Switchでの開発はとにかく苦労しまして...ハードに関わらず、基本的に開発はPCで作っているんですね。PCで動かしてみて、それを最終的にSwitchへ流し込んで検証するのですが、思ったものと違うものになっている!!
背景担当としては、少しでも綺麗に載せたいところだったのですが、容量を超えてしまってまともに動かなければゲームにならないですし商品として成立しないので、反省点も沢山あります...
もうちょっとデータが軽くならないの...?みたいな話をされる(笑)
すっごい工夫はしてるんですけどね...
あとエフェクトも特に言われますね。エフェクトは出ていないはずなのに「エフェクト重いんだけど...」とかみたいな(笑)

だいぶ圧縮しているのにも関わらずですね...でもクオリティを上げるのには、背景とキャラクターと場面とエフェクトのすべての要素が揃わないと画としては映えないので非常に重要なポイントなのですが、とはいえ「とにかく軽くしてほしい」というのは一番大きかった要望ですね。
せっかく作ったエフェクトも容量のためにごっそり捨てなきゃいけない...みたいなのは結構ありました。
当然ながら一つのゲームの開発期間はあまり長期化しない方が望ましいです。ですが、こういう面で今作はものすごい時間を持っていかれてしまいました。実際に色々を作り込むよりも、その動作確認や調整がそれは大変で、もうあまり思い出したくない。
まあでもそこに苦労したからこそ、今作は見た目の品質はすごいことが担保できたかなと思います。狂気的な作業量でしたが...

「超探偵事件簿 レインコード」チームの皆様にとって今までいちばん手ごたえのあった仕事は?
「超探偵事件簿 レインコード」(全会一致)
まあそうなるよね(笑)
僕にとってもそうだし、開発に関わっていたメンバーにとってもおそらく一番長い期間を費やしてきた作品かと思います。Switchタイトルの中では最高峰のグラフィックで、スパイク・チュンソフトから世界に打ち出すことができ、その反応も来ております。色々こうしたらよかったポイントはあるんですけど、それは次回の作品に繋げていければ。本当にとても良い形で出せたゲームタイトルかなと思います。
「ダンガンロンパ」シリーズがあったとはいえ、「超探偵事件簿 レインコード」は完全新作です。長い間業界にいますが、オリジナルの完全新作に携われる機会は実は少ないんですよ。ゲームランキングを見ても大体は続編か、何かのシリーズIPかという状況。でも今作はこれ自体が原作なので、ある程度自由に作れるし、開発が思いついた事に対して小高さんもダメと言わないタイプなので、どんどん要素が増やせる。
我々がやりたいことには(小高さんは)何もおっしゃらないですね。もう追加したいなら入れちゃえ!みたいな。結果、どんどん要素を入れていって、すごい物量になりましたけどね。
まあ、その物量も全然苦ではないというか、発展性のある世界観になったかな。なので開発が終わった時に達成感はもちろんあるけれど、同時に寂しさを感じるほどキャラクターたちへの愛情が湧いていました。

ユーザーからは分からない、実際に「超探偵事件簿 レインコード」の開発で追加された要素とは?
小高さんのシナリオはキャラクターのセリフだけで構成されています。各キャラクターがどこでどういう表情をするか、どんな演出かというロケーションや演技の記載はないのです。なので基本は各開発スタッフの方で考えて作ったというのが本作品での大きな要素かなと思います。あと謎迷宮!あれは大変な要素でした。小高さんはインタビューでも「謎迷宮がどうなるかずっと分からなくて」と仰っていたようですが、我々も何も分からなかったです。
一番最初の仕様書はパズルゲームでした!
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」みたいなイメージだったんでしょうね。結果として、今の謎迷宮の仕様に落ち着いてくれてよかったです。


スパイク・チュンソフトならではだな、と思うことはありますか?
結構自由なところじゃないかな。
社風が若い印象です。年末の忘年会(最近はリモート)で社長がゲストとトークしたり...こういったノリは弊社ならではだと思いますね。
あと全体として臨機応変ですよね。
個々のスタッフであってもやりたいと言い出したらやらせてくれるところはいいですよね。まあ言ったからにはその人がやらなければならないのもある種、らしさですけど。結果として自由にモノが作れています。
イメージや構造がガチガチに固められているゲームタイトルも弊社では少ないので、個人のアイデアでも面白ければ採用してくれる。最終的にチェックはありますが、考えてモノを作っていける環境ですね。
演出もそうですけど、絵コンテが全部あるわけでもなく、ただセリフしかないところを、じゃあこういう演技でとか、ここはこうした方がいいんじゃないかみたいなのとかも全部皆で考えて作れるところは結構レアじゃないかなと思いますね。
普通の開発ならちょっと色んな事情でやんないほうがいいんじゃないという判断になるところもちょっとやってみて!となり、試すことができる。
本当はスケジュール的にNGな場合が多いんですけども、それを許容してくれるのがプロデュースですので。ちょっと...発売が延びちゃうんだけども...みたいな(笑)結果として良いものにできる土壌ですね。
本当にスパイク・チュンソフトらしいなっていうのは、「もうこれぐらいにしときましょうよ」とか「ま、こんなもんでいいんじゃないですかね」という台詞を聞いたことがないことです。「もっとこうさせてくれ」とか「もっとこうしましょうよ」って声が常に開発サイドから出る。熱量が高いクリエイターが揃っているので、そのパッションを活かさないといけない。でもプロデューサーがスケジュールはここまでだからと区切ってしまえば、それで終わってしまうので、僕はそれをなるべく言わないように気を付けています。
そんなことねえよって思ってるかもしれないけど...
そんなことないっすよね(一同笑)
当初の予定よりかなり発売を延ばしたんです!!でも6月はないよね...早いよね...と開発の各所から言われました。僕のせいですごいデスマーチだったとか言われるし... でも実際に時間もお金も無限ではないので、本当にいいものを作りたいという熱量とのバランスは常に難しいなと思います。


皆さまにとっての「ゲームの仕事」とは?
趣味であり、生き甲斐であり、挑戦ですね。
本当にゲームが好きなんです。ただ現代だとゲームという単語で一口に言っても、色々なジャンルを内包しすぎていて先は分からないです。でもその全く分からないのが醍醐味で、面白いですよね。そもそも色んな技術をとても取り入れやすいというか、自分が子供の頃から見てきた感覚で言うと、まさかオンライン対戦が当たり前の世になるなんてまさか予想もできなかったわけで...今後もAIなどで飛躍的に発展していくと思うのですが、どうしたら次のヒットを作れるかの模索も興味深いですね。
斬新なゲームを作りたいという気持ちは常にあるんですが、幅広いユーザー層を見ていかないと発展性はないのかなという気持ちもあるので、次世代が何に興味を持っているか、どういうモノを作れば影響を与えられるかなというのは常に考えています。
最近のオンラインゲーム、例えば「Apex Legends」は実況でだいぶ一般的になりましたよね。もはやゲーム自体が一種のコミュニケーションツールになってきたのではないかと思います。結果、我々ゲーム会社もユーザーに対して考えを発信しますし、ユーザーからもさかんにフィードバックが返ってくる環境になりました。
昔に比べて、多くのゲームユーザーが「どうやってこの作品を作ってるんだろう?」というような開発への興味を持つようになったと思います。 海外ではそういうユーザーが昔から多かったんですけど、日本ではそれほど多くはない印象でした。しかし最近だと割とこちらの開発事情をお客様が察してたり(笑)どういうゲームエンジンで作っているかまでを気にしている。時代が変わってきましたね。
勉強ですかね。もはやマンパワーだけで回すような昔の開発のやり方では通用しないので、今作の開発もそうですけど、もっと新しい技術や知識を取り入れれば限られた期間でもより効率良くできたんだろうなと。で、効率良くできたら、発売後のいま直したいと思い残しているところがもっと直せて良いゲームになってるわけじゃないですか。なのでとにかく効率よくっていうのを今後もずっと探究していかないといけないと思ってて。そのためには一生どんどんインプットしていかねばと思います。まあ、ゲームの仕事に限らないと思いますけどね。
自分も趣味との境界が分からず生活の一部になっているタイプなのですが、さまざまな人と関わり、自身の考え方が変わったり、人との接し方などを学んだり、仕事を通じてスキル以外の部分も成長させてもらっているなと感じることがあります。
生きがいみたいな感じですかね。楽しく仕事ができるっていうのが大きいです。今回「超探偵事件簿 レインコード」でも「大変だったけど開発楽しかった」という感想がスタッフから出たりすると、ああ...やっぱり嬉しいなと思います。我々が楽しくゲームを作れなかったらそのゲームを遊ぶ人もきっと楽しく感じてくれないんじゃないかな...と。そういう意味では生き甲斐的な、その楽しさを追求していく場所なのかなと思います。
自分も趣味というか、生活の一部ですね。普段から風景や古い建物を観るのが背景作ってて繋がってくることがかなり多くて。逆にドライブで遊びに行くときもで常にこれを背景として作るならどうしよう、映画観ててもこういうの取り込んだらいいんじゃないのとか...常に背景作りをいつも頭の中で考えていて、そういう視点で全てを見てしまうし仕事を考えていない時間がないんですよね。本当に生活の一部という感じ。あとは皆で作らなきゃいけない仕事なので、みんなのことを考えています。つまり「愛」です。
なんか全部言われちゃってる気がする...やっぱり我々は「アソビ」を作っているので、我々が楽しんで作らないと良いゲームはできないかなと思っています。厭々やったものは、後から見ても微妙だなって思うものが多いんですよね。なので楽しんで開発の仕事をやっていきたいと思います。
僕だけは開発じゃなくてプロデューサーの仕事なのでその観点から述べると、プロデューサーはやっぱりクソゲーを開発されると困ってしまいます。当然売れませんので。なので良いゲームを作ってもらってなんぼの仕事です。なので、開発の皆が愛を持ってゲームを作れるようにこれからも頑張っていきたいと思います。あとこれはずーっと言おうと思っていたのですが...ここ!僕の手元を見てもらうとですね、ここに「週刊ファミ通」表紙号、ファンタジア文庫のノベライズ、ファミ通文庫のノベライズ、「月刊コミックジーン」のコミカライズ、エビテン(ebten)DXパックのぬいぐるみ...といったようにKADOKAWAグループの皆様一丸となって「超探偵事件簿 レインコード」を支えていただきました!!!本当にありがとうございます!(一同爆笑)
今後もぜひ新しい企画をお待ちしております!我々も引き続き「超探偵事件簿 レインコード」を盛り上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。


ありがとうございました!