ゲームレビュー

 【 3-B impressions 】
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ファミ通PS2 ババタイチ氏

正直に言うとテレビドラマの『金八先生』はあまり観ていなかったし、それなりに年を重ねてきたこれまでの人生で、先生になりたいと思ったことはない。まず前者はどうしても説教じみた印象が強く、それで敬遠していたからで、後者は自分に子供を教える自信が皆無だからだ。

もうひとつ正直に言うと、僕がこのゲームを始めたいちばんの理由は、チュンソフトというブランドだ。
サウンドノベルを作り出し、それを発展させ『街』でひとつの頂点まで築き上げた、妥協のないゲームメーカー。その信頼から、一定レベルの物ではあるという確信はあった。だけどそれ以上の期待は持っていなかったのも確かだ。

またまた正直に言おう。
ゲームを始めて2〜3時間経ったとき、僕は職場である編集部の自分の机で、ちょっぴり泣いていたのだ。 それなりに年を重ねてきた、いい年のオッサンがだ。
巧みなシナリオ、しっかり描かれたキャラクター、何より選択肢をカードにしたことで、能動的に物語に関われるシステムが、すんなりと僕をサクラ中学の新任教師に仕立て上げていたのだ。

正直言って、1周目を終え生徒たちの卒業を見送った今も、僕は先生になる気はない。
だけどゲームをやっているあいだ、僕は確かにあの青臭い子供たちの先生として、彼らの幸福を願っていた。それでいいんだと思う。フィクションを楽しむというのは、いかにその世界に入りこみ、そこで自分が何を感じたか、だからだ。そして『金八先生』は、間違いなく極上のフィクション体験だった。
それが忘れがたく、僕はまたサクラ中学の1学期の世界へと戻る。そしてまだ知らなかった生徒たちの一面を見て、泣いたり、怒ったりするのだ。

ゲームが好きな人も嫌いな人も、『金八』が好きな人も嫌いな人も、多くの人に遊んでみてほしいゲームだと思う。
それが今の僕の、正直な気持ちだ。

CHUNSOFT 20th Anniversary

(C)2004 CHUNSOFT 『3年B組金八先生』はTBSの著作物です。