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なぜお互いにデスゲームを題材にしたのか

(打越、ガスマスクを被った恰好で登場)

打越
○×△?◎■×》↑!@#&%……
小高
何て言ったんですか? ていうか、誰ですか?
打越
……ゼロです!
一同
……
打越
で、テーマは何でしたっけ?
小高
なぜお互いにデスゲームを題材にしたのか、ということです。
打越
なるほど。じゃあ、小高さんはなぜデスゲームを題材にしたんですか?
小高
僕はもともと推理ゲーム、とくに推理ミステリーがやりたくて。でも、なかなか企画が通らなかったのですが、そこで皆が殺し合うみたいな、ちょっと刺激的な題材を思いついたんですよ。それを企画書にしたら、けっこうウケがよかったから。というのがきっかけですね。デスゲーム自体が好きだったのではなくて、“殺人がどんどん起こっていく”というシチュエーションにグッときただけなんです。
打越
違う! それは違うな!
小高
え! 違うんですか!?
打越
デスゲームへの認識の方向性が間違っている!
小高
なるほど。
打越
僕が何でデスゲームを作ったかというと、まず人が閉じ込められている。「ダンガンロンパ」もそうですが、デスゲームってだいたい閉鎖空間で行われていますよね。だから、僕の作品ではそこから脱出するための“脱出ゲーム”がメインになっています。
小高
確かに。
打越
その脱出ゲームは、人間の根源的な欲望に根付いたものなんですよ。どういうことかというと、人間は生まれながらにして脱出ゲームをしてるんです。
小高
ほう。完全に今日はネタを考えてきていますね(笑)。
打越
そもそも、お母さんの胎内から生まれ出てくる、その時点で脱出が行われているんです。人は皆、生まれてくる瞬間から脱出ゲームが始まっている……ということなんですよ。つまり、人にとって“原初の欲望”を形にしたのが、デスゲームだと思うんですよね。
小高
それは絶対違う! だって、デスゲームって、やっぱり人に見せていないと成立しないじゃないですか。ルールがあったりする。ゲーム化されているというか。なんでゲーム化されているのかというところに、俺はいちばん意義があると思うんですよね。お母さんのお腹から出るとか、ゲームじゃないし、ルールもないし。
打越
ルールがなかったですか?
小高
どういうルールなんですか?(笑) よくわからない! わからないと言えば、打越さんの「極限脱出」シリーズをやって、何でこれがデスゲームなのかもよくわからなかったですね。
打越
……。
小高
そこはもうちょっと向かってきてもらわないと(笑)。
打越
話を戻して、何で僕がデスゲームを題材にしたかというと、自分が好きでおもしろいなと思っているものに、そのまま参加できたら超おもしろいじゃん、というところが理由です。
小高
そう言えば、なぜ打越さんは脱出ゲームをやりたかったんですか? 当時、“リアル脱出ゲーム”が流行り始めていたから?
打越
謎解きが好きだったというのもあるのですが、閉じ込められたい、でも出たい。という。不思議なアンビバレンス(相反する感情が同時に起こること)が人間の中にはあって。そこなんじゃないかなと。
小高
僕と打越さんが違うのは、打越さんは最初から作品の中でデスゲームをやろうとしていたのに対して、僕は物語の装置、道具として使うためにデスゲームを採用した……というところなのかなと思うんですよ。
打越
基本的にはプレイヤーの皆さんに楽しんでもらうための装置、という話ですよね
小高
ただ、最初のころはそれでよかったのですが、作品を重ねていくうちに、デスゲームというものも突き詰めて考えなくてはいけないのかな……という思いも出てきています。

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プレイヤーをのめり込ませるキャラクター
小高
打越さんは、そもそもキャラクターは大事にしているんですか?
打越
……大事にしていますよ。
小高
なんでちょっと言いよどむんですか(笑)。
打越
(笑)。
小高
キャラクターはどうやって作っているんですか?
打越
バランスを考えて、陰と陽であったりとか、男性的とか女性的だとか、保守的、積極的。みたいなものを組み合わせて作っています。
小高
打越さんのキャラクターは、毎回リアル寄りに作られていますよね。『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』でも思ったんですが、本当にクソみたいなやつとかいるじゃないですか。最初から最後までムカつくだけ、みたいな(笑)。僕は脇役でも、自分が好きなキャラじゃないと書けないんですよね。ああいう嫌なやつの描きかたとかって、どうやってやってるのかなって。あれがむしろ好きなんですか?
打越
基本的に死ぬキャラクターとかは、死のシーンを描こうと思ったときに嫌いになっていたいんですよ、すごく。
小高
あぁ。
打越
だからとことん嫌いなキャラにしてやろう、と。
小高
だから「極限脱出」シリーズは、より殺伐としている感じはありますよね。
打越
僕は、「ダンガンロンパ」の突き抜け感はすごくうらやましいと思っていますよ。「極限脱出」シリーズって、リアルなのかファンタジーなのか、ちょっとわからないところでやっていると自分でも思っているので。たとえば、2作目の『善人シボウデス』とか。
小高
……そもそも、今回の対談は「ダンガンロンパ」ファンを「極限脱出」が全部食いつぶしてやるぞ! という打越さんの強い要望から行われているんですよね?
打越
そうですそうです。
小高
だったら、もっとアピールしてもらわないと。「『ダンガンロンパ』のキャラなんて」みたいな。「極限脱出」シリーズのほうが、「ダンガンロンパ」よりいいわけでしょ?
打越
いやぁ、そんなことは(笑)。
小高
じゃあ「極限脱出」シリーズの何がいいんですか?(笑)。
打越
なんだろう。みんなががんばって作ってくれたことかな。
小高
「ダンガン」もみんながんばって作りましたよ!
打越
そりゃそうだ(笑)。
小高
ちなみに、キャラクターの名前はどうやって決めているんですか?
打越
「極限脱出」シリーズは、語感だったりとか、イニシャルが被らないとか。メインキャラクターが9人しかいないので。
小高
名前ってキャラクター作りにけっこう大事ですよね。最初にシナリオを書いているときも、すぐに頭に浮かばないとピンとこないというか。
打越
チュンソフトに入る前は、名前を考えるだけで1ヵ月かけていました。風水とか画数とかまで全部考えてやってたんですよ。
小高
へぇー!
打越
でも、その苦労が一向にユーザーに伝わらないっていう事実に気がついて(笑)。それよりも、わかりやすいほうがいいのかなっていう風に、いまは変わって来てます。

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ストーリー分岐、マルチエンディングの是非
小高
これけっこう意見が別れるところですね。
打越
「ダンガンロンパ」は一本道じゃん。
小高
一本道です。
打越
楽でしょ、書いてて。
小高
楽ですよ(笑)。ただ、僕は正直マルチエンディングのよさが、あまりわかってないんです。ゲームでしかできない、というのは確かにわかるんですけど。「何で同じシーンをもう1回やらないといけないんだよ。だったら違う作品やりたいわ」と思ってしまうんです。
打越
はい。
小高
エンディングをひとつ見たら、俺はもういいんですよ。違う作品、違う物語が体験したいみたいな風に思っちゃうし。分岐するぐらいだったら、一本道に全部おもしろい要素を入れてくれよ。みたいな風に思っちゃうんですよ。
打越
俺も同じ意見だね(笑)。
小高
同じなんですか?(笑) でも、「極限脱出」シリーズも、マルチエンディングだったり、ストーリーが分岐しているように見せかけて、じつは全体で見ると一本道だったりしますよね。
打越
そうなんですよ。たとえるなら山登りと同じで、別にどのルートから登ってもいいけど、頂上はいっしょだと。でも、途中で見える景色は違うというのをやりたくて、分岐を作ったんです。あと、僕は、自分の中で「こうならなかった自分って、どうだったんだろう?」ということを考えるタイプなんですよ。もしスパイク・チュンソフトに入ってなかったらとか。別の職業についていたらとか。そういうことを考えながら生きているので、自然と分岐が好きというか、そっちよりになっちゃうのかもしれないですね。
小高
あまりうまく言えないんですけど。俺は“ほかの自分がこうだったら”といったことは思わなくて。“if”を考えるより、いまの人生の危うさみたいなほうに、すごく興味があるというか。
打越
ものすごく細い糸の上を歩いている、みたいな。僕はそこのおもしろさを表現するために、あえて別のルートがあったらどうなるのか、というのを考えています。
小高
でも、それは選択肢じゃない気がするんですよね。違うときにプレイしたらまったく違うルートに進んでしまう。いったい、どうやってあそこのルートに行ったんだろう? というものをやりたい感じですかね。
打越
それをわかりやすく表現すると選択型になるんですよ。
小高
なるほど。
第3回に続く→