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吹きすさぶ砂嵐の中、重い砂に足を取られながらも先を急ぐ人影があった。

一つは青年。三度笠に道中合羽(格子のマント)。風来人の「シレン」
もう一つは小さく、一匹のイタチ、しかも今や珍しい語りイタチの「コッパ」

強烈な砂嵐は視界をふさぐだけでなく、まともに歩くことすらままならなかったが、一人と一匹は低姿勢をとりながら一歩一歩進んでいる。

コッパ「うう、やっぱり回り道したほうが良かったのかなぁ‥‥。はやいとこ、ぬけないと‥‥ウワッ!」
叫びと同時にものすごい強風が駆け抜ける。ふたりはあやうく吹き飛ばされそうになりながら、なんとかそれに耐えた。

コッパ「げほっ、ぺっ! ひでえ砂嵐‥‥」
遠慮なく口の中に侵入してくる砂を吐き出し、コッパが悪態をつく。だが言葉ほどには元気がなかった。
身体じゅう砂まみれで重く、まして視界の効かぬ現状では、どこまで歩いたのか、どこまで歩けばよいのかすらわからないのだ。

そしてとうとう、シレンがその場に膝をついてしまう。
コッパ「おい‥‥。シレン‥‥‥しっかりしろよ!シレン!」

しかし砂嵐はなおひどく、もう辺りすらなにも見えない状態だ。

コッパ「おい‥‥しっか‥‥り‥‥‥」

次第にコッパも力尽きてゆく。




シレンが目を覚ますと、あたりはひどく薄暗かった。空気はひんやりと冷たく、どこか湿っている。砂漠ではないようだ。

暗闇に馴れはじめた目で周囲を見回せば、そこはどうやら牢屋のような造りになっていた。両手を動かそうとしてため息をつく。両手とも頑丈そうな鎖につながれ、びくとも動かなかった。
いつもならうるさいほど騒ぎたてるコッパも、体力が消耗しているのかさっきから一言も口を開こうとしない。



illust「囚われのシレン」


やがて、囚われの身となったシレンのもとに、

ひとりの少女が訪れる‥‥


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