テーマ

ゲームシステム
小高
ゲームシステムへのこだわりはありますか?
打越
作品ごとに、毎回新しいことを考えています。『9時間9人9の扉』だったら“数字根”だし、『善人シボウデス』だったらあれね。
小高
うん。
打越
あれ。
小高
わかんない(笑)。
打越
(メモを見て)ABゲームです!(笑) 協力を選ぶか、裏切りを選ぶかっていうシステムがあって。
小高
あれは緊迫感があるなと思います。あのシステムを入れているのはなぜなんですか? 基本は脱出ゲームじゃないですか、プレイヤーが遊ぶのは。
打越
根本的には、遊んでいて皆が楽しそうだなと思うものを使っているだけなんですけどね。
小高
ああいうシステムがあることで、キャラクターたちがつねに疑心暗鬼になりますよね。協力していいのかとか、誰を切らなきゃとか。そういうシチュエーションが好きな人は、このシリーズを気に入ってくれるんじゃないかな、という気がします。
打越
うん。
小高
もうちょっと話を広げてくださいよ(笑)。そういえば、脱出ゲームはどういうところから作っているんですか? とくに1作目の『9時間9人9の扉』では、脱出ゲームの中のネタがそのままストーリーに絡んできたりするじゃないですか。あれはすごくいいなと思って。
打越
脱出ゲームとシナリオを分けるんじゃなくて、密接につながっているようにしたいなというのは最初から考えていました。シリーズが評価されているところのひとつの要因は、そこにあるんじゃないかなとは思っています。
小高
そうですね。単なるミニゲームになっていないのがいいなと思います。それに、ノベル系のゲームって、ミニゲームを遊んでいるあいだはストーリーが止まった感じがしちゃうじゃないですか。
打越
はいはいはい。
小高
ストーリーが見たいのに、ミニゲームをやらされるのかというときがあるけど、このシリーズの場合は、その脱出ゲーム内にキーワードがちらほら出てくるから、そのまま気持ちを引っ張ったままやれるというのはありますよね。
打越
そうですね。あとは、ふつうの脱出ゲームだと、主人公の独白だけで進んでいきますけど、「極限脱出」シリーズでは、そのほかのキャラクターがいっしょに閉じ込められるので、そこで会話をしたりしてより親密になれるとか、そういう要素を入れているんですよ。
小高
リアル脱出ゲームをやっている感じに近いですね。いまでもリアル脱出ゲームはすごく流行っているから、これもバカ売れするんじゃないかって(笑)。
打越
ですね!(笑)

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ワールドワイドでの評価
小高
そんな「極限脱出」シリーズですが、海外での評価がすごくいい、と。どうですか? 狙っていたんですか?
打越
狙ってはいないです。どこの国の方にやってもらっても、楽しんでいただけるように作ってはいましたけど。べつに海外受けを狙ったということではありません。ただ、すごくありがたいなとは思っています。
小高
やっぱり海外で売れてうれしいですか? あと、受けた要因って何だと思います?
打越
うれしいですよ、そりゃあ。要因は……まぁ、話がめっちゃおもしろかったからっていうことじゃないですか?
小高
ほぉ……。自信が。
打越
カメラ目線で(笑)。
小高
でも、海外では「ダンガンロンパ」も「ZERO ESCAPE」も、“ビジュアルノベル”でひと括りにされているっていう。あれが不思議ですよね。「ビジュアルノベルなんだ」って。
打越
「ダンガンロンパ」は、国内でもアドベンチャーゲームだとは言っていないよね。
小高
最初は「アドベンチャーゲームは売れない」みたいなことが言われていたので、ジャンルを変えようと。“ハイスピード推理アクション”だということで売り続けてきました。シューティングの要素を入れたのも、そういう風にしてちょっとアドベンチャーから遠ざけようみたいな気持ちはありましたね。
打越
ゲームを作っている人って、ひとつ何かを足すことで「いままでとは違うものにしよう」みたいなところがあったりするじゃないですか。それが僕の場合は脱出ゲームだったんですよ。
小高
作っているときは、海外展開するとは思ってなかったんですか?
打越
ほんのり思ってましたけど、まさかここまでとは。
小高
でも、一応ローカライズするだろうな。っていう体では作っていたんですか?
打越
そうですね。ぶっちゃけて言っちゃうと、『9時間9人9の扉』の舞台は、最初海洋石油プラントにしようかなと思っていたのが、企画会議とかで、「海洋石油プラントってピンと来ねぇな」と言われて。海外ウケするように、海外の方でもピンとくる場所にしてくれと言われて、「じゃあ、タイタニックとかどうですかね?」と言ったら「タイタニックだよ! 打越くん!」と(笑)。
小高
「極限脱出」シリーズのファンはどこをいちばん楽しんでいるんですかね?  打越さん分析で。
打越
どこなんですかね。まぁ、やっぱり話でしょうね。
小高
謎めくストーリー。意外な展開! そういうのが好きな人は買うべきだと!
打越
そうですね。
小高
「ダンガンロンパ」もそうですけど、「極限脱出」シリーズは、見た目はストイックだし、なんとなく雰囲気もストイックな感じだけど、まぁオチは荒唐無稽ですよね。
打越
ある程度予想の付かないものにしようとするとどうしてもね。そうなっちゃう。
小高
でも、そこがやっぱり気持ちがいいところですよね。海外のプレイヤーもそういうところを楽しんでいる節はあるから。でも、それは日本の人たちも、もちろん同じだと思いますよ。荒唐無稽な大オチは、みんなで議論してもおもしろいんじゃないかなと思います。オチは最初から考えているんですか?
打越
僕は最初から考えますね。オチありきで、オチに向かってどうやって行くかっていうのを。
小高
へぇー。
打越
途中で変えたりするんですけどね。オチへの道のりを頭から考えていったときに、その時点でこうやったらおもしろいかな? っていうのを考えていく感じで。
小高
だから、打越さんの作品は緻密ですよね。緻密というか、計算されているな。というのは感じますね。

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お互いのいいところ
小高
打越さんは長いキャリアがあって、いいですよね。長く仕事を続けられているというのはすごいなと。
打越
なるほど。
小高
僕はいつ終わるかわからん、みたいな感じですから。
打越
僕が小高さんがすごいなと思うのは、話のおもしろさと、シナリオのセンス。でもそこでワーキャー言われたいところはあるでしょ、やっぱり。
小高
モテたいって気持ちは男の原動力ですよ。打越さんは、業界人気が高いですよね。あれは嫉妬しますもんね。でも、打越さんは飲まないとしゃべれないうえに、飲むと著しくつまんないんですよね(笑)。
打越
そう? 俺は楽しいよ! ねぇー?
小高
(笑)。けっきょく、何かないんですか? 作品のアピールは。
打越
アピールですか?
小高
うん。自分が作った作品なんですから!
打越
僕自身が言うのも何ですけど、おもしろいと思いますし、海外の方にも、もちろん国内でも評価してもらっていますので、やっていただいて損はしないと思います。とくに『ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック』をやってもらって、『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』をさらにやっていただけると、「あぁ、こういう風に歴史が続いて行くんだ」というのがわかると思います。
小高
10年前のシナリオって、いま自分でやってどうでしたか? 覚えてないでしょ、内容とか。
打越
うーん。でも、今回『ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック』ではデバッグというか、もう一回やり直したりしているので、それで思い出したりはしました。
小高
でも、第1作はやっぱり偉大ですよね。完成度自体は後半のほうが上がってくるんですけど、第1作には何かを始めるパッションがあるなと。だから、オチもそうだし、数字根もそうだし、あとは脱出ゲームのあいだに本筋に絡んでくるネタが入ったりとか。このタイトルでこれをやらねば。みたいな物が詰め込まれている感じがしますよね、『9時間9人9の扉』には。
打越
そうなんです!
小高
それで第2作の『善人シボウデス』は、完成度が上がっているなと。画的な見せかたが変わったじゃないですか。急にポリゴンになってね。
打越
はい。
小高
そして、ゼロ3世というキャッチーなキャラクターが出てきて。
打越
これですね。
小高
それ、マムル(「風来のシレン」シリーズで登場する、おなじみのモンスター)でしょ?
打越
(笑)。さっきの質問で言うと、もちろん全部自分の自信作ではあるし、おもしろいなとは思ってますけど、やっぱり『善人シボウデス』は、デバッグを自分でやってたときにも「これおもしれぇ」って、自分で思いましたから。スタッフが徹夜しているところで、「わーおもしれぇ」って言っていたら、みんながクスクスって笑っていて(笑)。
小高
アットホームですね(笑)。でも、デバッグで満足げな感じになるのはいいですよね。
打越
みんな疲労困憊なんだけど。
小高
あの瞬間は楽しいですよね。やっぱり。
打越
うん。
小高
とくに『善人シボウデス』ではそれが強かったと。なるほど。期待大ですね!
打越
はい!