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Mr.ZERO Interview Report

ディレクター打越氏の代わりに、現れた謎の男Mr.ZERO氏。今日も又取材に応じてくれたのだが...

今日も登場Mr.ZERO氏

2011年1月某日


編:今日で4回目の取材ですね。Mr.ZEROさん、本日も宜しくお願いいたします!

ゼロ:うむ。私はMr.ZEROである。


ピロロロ…ピロロロ…(携帯が鳴り響く)


ゼロ:あ…。

編:あ、どうぞ…。出ていいですよ。

ゼロ:うーむ、それじゃあ失礼して。



着信画面をみてモジモジしだすZERO氏。
私の見間違えでなければ、画面には「お母さん」と表示されていた。

いそいそと部屋の隅に移動したZERO氏。

着信を確認するや否や、部屋の隅にいそいそと移動するZERO氏。


ゼロ:仕事中かけてくんなっていってんだろ


え?...うんうん、、、いいよ自分で買うからぁー、もう切るよ!


え?...違うよそれ俺じゃないよ、オレオレ詐欺だよそれ!もう切るよ!


え?...うんうん、、、ちょ、それは捨てないでよ!それはいつか使うの!


照れくさそうに電話をきりいそいそと席に戻るMr.ZERO氏


編:え?(笑いを堪えて)ちょ、今のお母様からですか?


ゼロ:(赤面)いいよ、そこいいから、始めてよ。


編:っていうか、オレオレ詐欺にあわれたんですか??(っぷ!)


ゼロ:なんだよー!そこ笑うとこかぁーよぉー!!


編:いえいえ、皆さんも気をつけましょう。です。

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打越氏の仕事について

編:サウンドやグラフィック(コンテ)のチェックなども打越さんがするのでしょうか?


ゼロ:いちおう打越はディレクターでもあるので、すべてに目を通しているぞ。
打越の主な業務は次の通りだ。


企画立案、プレゼン、キャラ設定、舞台設定、EVCG・EVmovieの指定、シナリオの執筆、ノベル演出指定、
ノベルスクリプトチェック、BGMチェック、脱出パートを企画班と一緒に考える、出来たものについて修正要望を出す、脱出用メッセ執筆、バグ取り(同時にスクリプトを書くこともある)、デバッグ対応。
あとは今回のように広報関連の仕事もあるね。


編:その中でも最も苦労されたのは?

当時を振り返り、懐かしそうな表情のZERO氏。

ゼロ:ノベルパートのシナリオ執筆ももちろん大変なのだが、なんと言っても脱出パート用のメッセージ作成。これは本当に難儀で厄介で過労死するかと思ったよ。と聞いているよ。

実際にプレイしてみると、なんてことはないように思われるかもしれないが、あのスクリプトの中には膨大な量の分岐が込められているのだ。そのうち重要な部分についてはフラグが立っているかどうかでメッセージを変えなければならない。しかも今回は「EASY用」と「HARD用」のふたつのメッセージがあり、また「脱出用」「隠しアーカイブ用」というふたつの仕掛けがあったりもした。……と言ってもうまく伝わらないかな。

「だいたい朝から晩までぶっ通しで作業して5日で1ステージあがるかどうかという作業量」と言えばわかっていただけるだろうか。
それが16ステージあるわけだから、単純計算しても80日はかかることに……。そんなわけで今回は2ステージほど、企画班の金子くんに脱出メッセを書いてもらった。これまた「本当に心から感謝している」と打越は言っていたぞ。

シナリオライターというお仕事について

編:小さい頃から本を読んだり、実際に話を考えたりすることは好きでしたか?


ゼロ:打越は好きだったみたいだぞ。この前、吉祥寺ジュンク堂の児童書のコーナーに行ったら、寺村輝夫氏の一休さん、吉四六さん、おばけのはなし1~3があったらしくてな、猛烈な懐かしさに襲われたのだそうだ。確か小学校の低学年ぐらいの頃にむさぼるように読み返していた記憶があると。
そういえば「おばけのはなし」で思い出したが、同じ頃「Cちゃん」というオバQのパクリ漫画を描いたりもしてたらしいぞ。あとはダグラムのパクリ漫画とかな。いわゆる黒歴史というやつだ。



これが「Cちゃん」だ!

編:このお仕事に就いたきっかけは?


ゼロ:打越は若い頃しょーもない奴でな。今でもしょーもない奴だが、とにかく彼は今よりもさらにしょーもない奴だったので大学を中退してしまったのだ。で、ぶらぶらとしょーもない生活を送り始めた。
今で言うところのニートだな。とはいえ無職だったわけではなく、バイトをして生計を立てていた。家を追い出されて茅ヶ崎で一人暮らしをしていたのだ。収入は月10万円前後。キャベツにマヨネーズをかけておかずにするような日々だった。しかしあるとき思い立つ。「このままじゃいかん!」と一念発起したのだ。
そして1997年に専門に通い始め、98年からゲーム会社に勤めるようになる。はっきり言って奇跡だ。今では考えられないような採用だったと思う。


編:「キャベツにマヨネーズがおかず」からのステップアップがすごいですね!

ゼロ:ゲーム制作という職種を選んだのは、これからの長い人生を考えたときに「その大部分は労働時間によって占められるであろう」という当たり前の現実を前にして「であるならば、薄給であろうと、過酷であろうと、自分のやりたいことを仕事にしたほうが得策ではなかろうか」との思いを抱いたからだった。

そこでなんらかの創作系の仕事に就こうと心に決めたわけだが、中でもゲームは当時最も勢いのあるジャンルで(バイオハザード、サクラ大戦、ポケモン、みんゴル、パラッパラッパー、ペルソナ、クーロンズゲート等々が出た頃)「インタラクティブ」なんて言葉がもてはやされているような時代で、そこに当時の打越青年は(厨二病的な言葉で言うと)未来を感じたんだな。映画や小説は一方通行だけれど、ゲームには双方向の面白さがあると、そう思ったわけだ。そのときに抱いた感覚は、今でも自身の作品に色濃く反映されているような気がする、と打越は言っているよ。

当時を振り返り照れ笑いの表情のZERO氏。

編:時代はまさにプレイステーション創世記ですね。プレイステーションのCMがばんばん流れてて…それらのタイトルが出た頃をよく覚えています。

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打越 鋼太郎ヒストリア

ユーザーへの熱い思いを語るZERO氏。


編:ご自身の過去の作品について印象に残っていることは?

ゼロ:いろいろとありすぎて、どれをピックアップすればいいのか難しいのではないかな。どの作品にも想い出がぎっしりと詰まっているからね。ケンカしたり、泣いたり、笑ったり……。この歳になっても、そういう青臭い経験ができるのは本当に恵まれていると思う。と打越は言っているぞ。

編:シナリオ制作中に詰まることはありますか?

ゼロ:「詰まらない作業はツマラナイ作品を生み出す」と昔どこかの作家が言っていたよ。要するに「ツマラナイ作品にしないために詰まる」ということかな。

編:その際の対処法や気分転換の方法は?

ゼロ:特にないようだよ。詰まったときには徹底的に詰まりまくって圧力を溜め、一気に開放されるのを待つ。打越は不器用な作り手だからね、切り替えとか上手くできないらしいんだ。向いてないんじゃないかな、この仕事。


編:どんな事を思いながらシナリオを書きますか? たとえばユーザーに対して、いい意味で裏切ってやろう、とか……。


ゼロ:いつも念頭に置いているのは、どうすればプレイヤーに楽しんでもらえるか、だと思うよ。そのためには一字一句たりとも疎かにしてはならない。高いお金を払って作品を買ってもらっているのだから当然だよね。
たとえば今、映画のDVD1本は250円ぐらいでレンタルすることができるだろう? その250円で、ユーザーはおよそ2時間ぶんの娯楽を得ることができる。
ところで「善デス」の希望小売価格は約6000円だ(って高すぎだろJK!)。どういうことか?
つまり善デス1本には【少なくとも映画24本ぶんの面白さが詰め込まれていなければならない】ということだ。時間にすると48時間ぶんの娯楽になる。


編:なんだか妙に納得してしまいました。

ゼロ:話をもっと簡単にしよう。今仮にユーザーのひとりが密室に閉じ込められているとする。彼の手には6000円があり、睡眠時間を除いた48時間ぶんの自由な時間が与えられている。部屋の片隅には、映画のDVDの自販機とモニター及びDVDプレイヤーがある。その反対側には「善デス」だけが収められた自販機と3DSまたはPS Vitaがある。
さて、ここで問題……。彼はDVDの自販機と、善デスの自販機、どちらに6000円を投じるだろうか? いや、どちらに6000円を入れるかは、実は開発者としては特に大きな問題ではない。重要なのは「善デス」のほうを選んでくれたユーザーに対して『ああ、こっちを選んでよかった、満足した』と思わせることができるかどうかだ。『映画24本を観るよりも「善デス」をプレイして過ごした48時間のほうが有意義で実りあるものだった』と思ってもらうことだ。
「善デス」の平均プレイ時間は、およそ30時間と見積もられている。映画を観て過ごすよりも18時間ぶん足りない。けれど、この18時間ぶんの空白期間を補って余りある楽しさが「善デス」にはある。なければならない。そうでなければ「善デス」の自販機を選んでくださったユーザーの方々に申し訳が立たないから……。

熱い気持ちが過ぎ、マスクの中が暑くなってきてしまったZERO氏。

とまあそんなわけで、打越は常に「このゲームは果たして、映画24本ぶんに相当するだけの価値があるだろうか」というようなことを自問しながら制作に当たっているようだよ。これはシナリオの執筆時のみならず、企画・ディレクションを含めたすべてのゲーム作りの過程において言えることだけどね。


編:"ゲーム一本が映画24本ぶんに相当するだけの「価値」があるだろうか"…。
私はいつも受け取る側の人間なので、作り手の作品に対する真摯な姿勢が感じられて、敬服しました。


Mr.ZEROさん、ありがとうございました!