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Mr.ZERO Interview Report

Mr.ZERO スペシャルインタビュー ディレクター打越氏の代わりに全てを答える。と、突如現れた謎の男Mr.ZERO氏。今回も又、打越氏は現れないのだろうか...不安な気持ちは解消されること無いまま、約束の時間はやってきた。

再び登場

2011年12月某日
12月とは思えないぽかぽかの小春日和の昼下がり。私はまた、チュンソフトにやってきた。
「善人シボウデス」のディレクター兼シナリオライターである打越鋼太郎氏に話を聞くためだ。
しかし前回では、ガスマスクを被った謎の男、自称『Mr.ZERO』が打越氏に代わってなぜか取材を受けることとなった。
今日こそは打越氏に会えるだろうか?──いや、実は私は、自称『Mr.ZERO』こそが打越氏であると疑っている。
そうであれば…今日こそはマトモな打越氏に会えるだろうか?


不安を抱えつつ、通された会議室で打越氏を待った。ノック音がして、ドアが開く──
…やはり期待は裏切られたようだ。


そこに立っていたのは──ガスマスクを被った謎の男だった。


ゼロ:いやぁ、お待たせ。

編:あっMr.ZEROさん!!マントはどうしたんですか?カジュアルすぎ!

ゼロ:あ、マント置いてきちゃった。 ちょっと邪魔だしアレ。

編:...今日も打越さんは来られないんですか?

ゼロ:あ、打越は今日もダメだって。困ったヤツだよね。

編:はぁ、じゃあ今日もMr.ZEROさんにお話を聞くということで。

ゼロ:うん。まぁ打越の事なら任せてよ。じゃ、早速始めようか!

編:はぁ。それじゃあ。


とてもカジュアルなZERO氏。

タイトルについて

編:「善人シボウデス」というタイトルをつけられたのは打越さんですか?


ゼロ:いや、私ではない。


編:私……?


ゼロ:あー、えーと、打越ではない。


編:…あ、えーと。どうしてこんな(強烈な)タイトルにしたのでしょうか?


ゼロ:経緯を説明しよう。
まず社内スタッフに声をかけてタイトル案の募集を行なったのだ。
集まった案をざっと列挙していくと……


『九人のジレンマ』『ロストエスケープ』『ドSケープ』『リゾーム9』『シグマコントロール』『ハコヌケ』
『不信感染』『エスカルゴ』『A/B』『アンビバレントサバイバル』『裏切りは愛の証し、協力は憎しみの兆し』『マヤカシノヤマシ』『さよなら謀叛人』『ハカリゴトビラ』『たばかれ!バカたれを!』『タブラカタブラ』『まさかイカサマ(回文)』『嘘九百』『ヒューマンモードキラー』『九鼠、猫を噛む』
『シグマとファイと天明寺とクォークとアリスと四葉とディオとルナとKが奇妙な場所に閉じ込められちゃって大変なことに!』『ウラギリの9』『TRUST NO ONE』
『Uranological Guilt(略してウラギル)』
『拉致られ、そしてヒトデナシ』『ウラギリ×ギリギリ』『助かりたいならしんじぁえば』『善人シボウデス』……


ゼロ:となる。
とはいえ、これらはほんの一部でね。実際にはこれの十倍以上の案が集まったのだよ。

真剣な眼差し(おそらく)で語る
ZERO氏。

編:タイトル候補を募集したんですか!それにしても、センスのあるネーミングもありますが、テキトーなものも混ざってますね(笑)

ゼロ:その後紆余曲折あって、最終選考に残ったのが『ウラギリ×ギリギリ』『しんじぁえば』『善人シボウデス』の3つ……。しかしそれぞれの案を推す者たちが互いに一歩も譲らず、最終的には【ジャンケン】で『善人シボウデス』に決まったのだ(笑)

編:最後はジャンケンですか(笑)。さすがに最終候補はどれもいいですね。『しんじぁえば』は読み方が二通りで面白いですね!

シボウデス=?

編:では最終的に決定した『善人シボウデス』のタイトルにこめられた真意・意図などを教えてください。


ゼロ:読んで字のごとしだよ。『善い人になることを【志望】しています』という意味だ。それ以外の真意や意図などない。


編:本当ですか?「シボウ」にはもうひとつの別の意味があるのでは?


ゼロ:なるほど。本当は『善人脂肪です』なんじゃないかと、きみはそう言いたいわけか。ふむ、面白い。確かに善人とは脂肪のようなものだからな。あり過ぎても、なさ過ぎても人体に悪影響を及ぼす。


編:ごまかさないでください。私は「死亡」のことを言ってるんです。もしもそう解釈するなら、ユーザーはゲームをクリアするためには「悪人にならなければならない」ということになりますよね。


ゼロ:さあ、どうだろう。それは善人・悪人の定義によるのではないかな。1人を見殺しにして他の多くの人間を救うのが善なのか、あるいは他の多くの人々を犠牲にしてでも1人を救うのが善なのか、そのへんを考えながらプレイするのも一興かもしれんな。


…あ、ちょっとごめん。お昼まだだったんだ。おにぎり食べていい?食べながら話聞くから。


編:えっ、あっ、ハイ。どうぞ…。


ゼロ:では失礼して…


おにぎりをお茶で流し込むZERO氏。

ふぅ。あ、もしかして見えた?


編:いえ…。(と言っておこう)


ゼロ:じゃあ、続けましょうか。

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「善デス」のシナリオ制作過程

編:今回、どんな風に脚本を書いていきましたか?
例えば、キャラクターをつくるのが先なのか、シナリオが先なのか?など様々な手順があると思うんですが。


ゼロ:今回、というかいつも同じなのだが、まずはキャラクターのたたきを作り、舞台設定と時代設定を考え、ゲームシステムやシナリオの分岐構造を考案しつつ、短めのプロット(シノプシス)を書いてみて、それに合うようにキャラ・舞台・時代・分岐構造を調整し、さらにプロットを練り込んでいって……という往復の作業を延々と繰りしていく。おそらく他のゲームシナリオライターや企画の方々も同じではないだろうか。
……と打越は言っていたぞ。


編:もう、打越さんということでイイじゃないですか。


ゼロ:私はMr.ZEROである。


編:ハイ…。
えーと、今回の脚本制作の中で、言える範囲で構わないのですが、一番苦労した点はどこでしょうか?

ゼロ:複数の物語を書かなければならなかったところ、かな。シナリオサポートの高木さんにもかなり助けてもらって、本当に心から感謝している。
とにかく同じ設定で複数の異なった結末を考えるのは、実に骨の折れる作業だったよ。歴史的に矛盾があってもいけないしね。

ゼロ:さらに今回の物語ではBPという増減するポイントの設定があるから、その表を参照しながら慎重に物語を書き進めていかなければならなかった。
1点でも間違いがあると、即座に物語が破綻してしまう。だからその場の思いつきで展開を変えようとしても、なかなか簡単にはいかなかった。そこを直すと、ひとつ前のABゲームの結果も変えなければならず、すると分岐構造上リンクしている別のシナリオも書き直さなければならないということに……。
すべてが密接につながり合っているから、容易にはなにかを加えたり、引いたりできなかったのだ。まるでトランプで作った塔のようにね。どこかから1枚を引き抜けば、すべてがガラガラと音を立てて崩れ落ちてしまう。今回のシナリオは、そんな繊細な構造の上に成り立っているのだ。……と打越は言っていたぞ。
とにかく同じ設定で複数の異なった結末を考えるのは、実に骨の折れる作業だったよ。歴史的に矛盾があってもいけないしね。

勢い余って食べかけのおにぎりを振り回すZERO氏

編:推理小説や探偵小説では、謎解き部分から話を作っていく…という事がありますが、打越さんもそんな流れでストーリーを練ることはありますか?


ゼロ:私は打越ではないのでよくわからないのだが、おそらく半々といったところではないかな。基本的な部分については杭として打ち込んでおくが、その他諸々の流れによって、杭へと至るまでの過程は変わっていく。そして、その杭が邪魔になれば取り除く。あるいは別の場所に差し直す。直前の質問に対する答えは、この杭の打ち直しが容易ではなかったということだ。……と打越は言っていたぞ。


編:(なんだか打越氏ではないという事をやたら強調しだしたな…)
ADVゲームのシナリオは『分岐』があるということで、様々な結果を用意しておかなければならない、そしてさらにその結果の結果も用意しておかなければならない…という事になりますね。それはそれは膨大なテキスト量だったでしょうね…。
打越さん…じゃなくてMr.ZEROさん、本日はありがとうございました!

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